業界裏話

「化粧水はほぼ水」説を検証したら爆死した~化粧品の原価率

  • 化粧品の原価率は低いって聞くけど、実際どうなの?
  • 化粧水はほぼ水って本当?
  • 原価以外の化粧品って何にどれだけ使われているんだろう…

この記事はそんな疑問を持つ方に向けて書かれています。

化粧品は視覚情報や販売促進費が売れ行きを左右するためCMなどの広告宣伝費・デパートの接客にかかる人件費などが高額であり、化粧品そのものの原価は20%ほどしかないとよく言われています。

化粧水の成分はほぼ水、なんて話もありますが正確な情報を知るために決算書から原価率や広告宣伝費を算出してみました!

大手化粧品メーカーと主力ブランド

今回調べたのは、化粧品メーカーの2020年売上ランキング上位3社「資生堂」「コーセー」「花王」です。

  • 資生堂 マキアージュ (白石麻衣)、インテグレート(小松菜奈)
  • コーセー 雪肌精(新垣結衣)、ジルスチュアート
  • 花王 プリマヴィスタ(石原さとみ)、ビオレ

化粧品の原価率

化粧品メーカー大手3社原価率

化粧品メーカーの原価率は資生堂26%、コーセー28%、花王57%です。

資生堂の原価率26%から、これだけ見ると「ほぼ水」は盛りすぎでは?と疑問に思いますが、この疑問を解くには決算書における「原価」の意味を理解する必要があります。

一般的に化粧水の原価と言われてイメージするのは、水溶液に含まれている美容液といった「原材料費」だと思います。しかし会計の世界では原価の中に製造のためにかかった費用全て、つまり工場の人件費や光熱費も原価に含まれます

決算書から原材料費は分かりませんが、業界関係者が明かす原材料費は以下のようになっています。

化粧品の原材料費
  • 化粧水:1~2円
  • 乳液:2~3円
  • 口紅:5~10円
  • ファンデーション:20~30円
  • 容器代:50~100円
  • 包装代:30~150円

レイ
レイ
確かに、化粧水は水と言われても仕方がないですね泣

定価には卸業者や小売業者の中間手数料も上乗せされています。

高級化粧品もこの割合は変わらず、高級品と一般の化粧品との違いは美容部員による接客・高級感の演出・万人受けではないが特定の悩みに効果がある成分などです。化粧水は化粧品の中でも特に材料費が安いことから、「ほぼ水説」が広く出回ったようです。

原価の話から原価率に話題を戻すと花王が原価率57%と化粧品メーカーの中で異彩をはなっていますが、「これからは少しでも原価率が高い花王の化粧品を買おう」と判断するのは危険です。

花王は原価率の高い事業を複数持つ多角経営であり、化粧品以外の事業で原価率が上がっていると想定されます。売上高に化粧品が占める割合は16.9%だけです。

レイ
レイ
現実は厳しい、、、

化粧品と同じぐらいの16.7%の割合を占めているケミカル事業は、企業向けの精密洗浄剤を作っています。精密洗浄剤とは、工場で製造中についた汚れを落とすため出荷直前の半導体や液晶を洗う時に使われる洗剤です。

花王は有名な洗剤「アタック」を作っていますが、工業用にも展開しているんですね。このようなBtoB(法人向け)事業では広告の効果は薄く、広告宣伝費が含まれる販管費に費用をかけないため原価率が高くなります。

化粧品メーカーの販管費

化粧品の原価率が低いことが分かったので、化粧品のコストの大部分を占める販管費を見ていきます。下記は化粧品メーカーの売上に対する販管費率と、主な販管費の内訳です。

主な販管費の売上高に占める割合
(2020年度有価証券報告書より作成)

資生堂、コーセーは販管費が売上の約70%を占めています。広告宣伝費については、東洋経済が発表した「広告費が多い企業ランキング」「広告宣伝費の比率が高い企業ランキング」が参考になります。

広告費ランキングでは、資生堂20位、コーセー61位、花王11位と3社とも100位以内につけています。但し、広告費率ランキングでは資生堂166位、コーセー140位、花王150位と順位を落とし、売上を考慮すると目立って高いわけではなさそうです。

広告費ランキング

販管費は広告宣伝費の他にも、デパートでメイクしながら接客する美容部員の人件費や、無料サンプル、マーケティング、研究開発費などを含み、売上総利益のほとんどを使ってしまいます

特にコロナで外出しなくなってから化粧品の売れ行きが悪くなったので、2020年度に売上から原価・販管費を引いた利益(営業利益)はかなり少なくなってしまいました。

2020年度営業利益率

資生堂の2019年度営業利益率は10%でしたが、プレミアムブランドやレストランを中心に、小売店の休業が打撃となって2%まで落ち込みました。一方、花王も前期比から利益が減っているものの、ビオレに代表される衛生・消毒用品の売上を伸ばしたことで13%の利益率を出しました。

まとめ

  • 化粧品の原価率は20%台
  • 関係者によると化粧水の材料費は1~2円とほぼ水である可能性が高い
  • 化粧品メーカーの売上は主に広告宣伝費と人件費に使われている

最後までお読みいただきありがとうございました!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA