こんにちは!レイです!
25回目の「業界目安の完全版」はCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)です。
29業種の大手企業をグラフで比較しているので、業種や企業によってどのくらいの差があるのか一目で分かります。
CCCとは
CCCとは商品を仕入れてから売上が現金化されるまでの日数のことです。
企業は商品を仕入れて売りますが、通常は商品が現金化する前に仕入れの支払い期限が到達します。
仕入先に代金を払ってから売上が現金化するまで資金繰りが苦しく、この一番現金が少ない期間をCCCと言います。
CCCを改善するには、①販売代金の回収期間を早くする②保有する在庫を少なくする③支払いを遅くする方法があります。
仕入債務回転期間の目安と比較
一般的にCCCは短いほうが経営効率がいいと言われますが、40~70日が基準です。
アップルのCCC
アップルはとても資金繰りがよく、2021年9月期のCCCはマイナス57日です。仕入れた部品の支払よりも先に販売した製品の代金が入金されることになります。
アップルは棚卸資産回転期間が11日であり、10日分の在庫しか持っていないことになります。
1996年はアップルもCCCが70日以上でしたが、スティーブジョブズは1997年に復帰してすぐにCCCの改善に着手しました。
アップルはプリンタ・サーバ・デジタルカメラなどを扱っていましたが、それらから撤退してプロ向けのMacを外部委託で生産する方式に切り替えました。
アップルのように製品の企画と開発を担当し、製造以降の工程は、他の企業に任せる会社を「ファブレス企業」と言います。
その結果在庫を抱える必要がなくなり、2000年以降はCCCマイナスを維持しています。
在庫を抱えないことは短期間で新製品を打ち出すアップルの戦略とも相性がよく、型落ちの商品を不良在庫にしてしまうリスクが低くなります。
以下では証券取引所の金融を除く29業種について、売上高1~3位の企業のCCCをグラフにしています。
※2020年10月~2021年9月に開示された有価証券報告書を参照
業界はザイマニで上場企業のCCC2020年中央値が小さい順番で並べています。
計算はバフェットコードとEXCEL財務分析ツールを使っています。
小売業
イオンは64日、セブン&アイ・ホールディングスは41日、ファーストリテイリングは85日です。
小売業のように売上がすぐに現金化される企業はCCCが短くなりやすいです。中でも食品・生ものを扱うコンビニは在庫の回転率が高く、CCCが小さくなります。
海運業
日本郵船は-88日、商船三井は-49日、川崎汽船は-41日です。
海運業は基本的に在庫を持っておらず、棚卸資産に含まれるのは燃料費ぐらいであるため、CCCがマイナスになります。
陸運業
日本通運は35日、東日本旅客鉄道は126日、東海旅客鉄道は12日です。
東日本旅客鉄道が東海旅客鉄道よりCCCが長くなっているのは売上債権回転期間が60日差が開いているのが主な要因です。
JR東日本はビューカード株式会社のように多様な事業のグループ会社を持っており、売上債権回収に時間がかかるビジネスも多く含まれていると考えられます。
不動産業
三井不動産は425日、飯田グループホールディングスは114日、三菱地所は108日です。
三井不動産は棚卸資産回転期間が飯田グループホールディングス・三菱地所より約400日長いです。
大規模開発する土地の企画・マーケティングから考えるため、棚卸資産回転期間が長くなっていると想定されます。
倉庫・運輸関連
上組は-105日、三井倉庫ホールディングスは-77日です。
倉庫・運輸関連は在庫を持たないビジネスのため、CCCが短くなります。
食料品
日本たばこ産業は114日、アサヒグループホールディングスは-15日、キリンホールディングスは72日です。
サービス業
博報堂DYホールディングスは4日です。
鉱業
INPEXは103日、石油資源開発は50日、日鉄鉱業は104日です。
卸売業(商社)
三菱商事は50日、伊藤忠商事は44日、三井物産は47日です。
卸売業(商社以外)
メディパルホールディングスは-10日、アルフレッサホールディングスは-8日、三菱食品は-5日です。
卸売業は3社とも売掛金・棚卸資産の合計より買掛金の方が大きいです。
これは小売などの顧客から売上が入金されるまで、仕入の支払いを行わないことを示しています。
結果として、実質的に無借金経営を実現しています。(D/Eレシオが0に近い)
パルプ・紙
王子ホールディングスは85日、日本製紙は131日、レンゴーは71日です。
その他製品
任天堂は40日、凸版印刷は96日、大日本印刷は66日です。
繊維製品
東レは122日、帝人は128日、東洋紡は157日です。
水産・農林業
マルハニチロは103日、日本水産は113日、極洋は110日です。
輸送用機器
トヨタ自動車は20日、本田技研工業は38日、日産自動車は38日です。
情報・通信業
ソフトバンクグループは-101日、KDDIは68日です。
建設業
大和ハウス工業は94日、積水ハウスは-54日、大林組は-81日です。
化学
三菱ケミカルホールディングスは111日、富士フイルムホールディングスは151日、住友化学は101日です。
金属製品
LIXILは28日、東洋製罐グループホールディングスは127日、日本発條は80日です。
LIXILのCCCが短いのは、仕入債務回転期間が長いためです。LIXILは知名度が高く、匹敵する競合もいないため、交渉力が強いと想定されます。
非鉄金属
住友電気工業は126日、三菱マテリアルは154日、古河電気工業は106日です。
鉄鋼
日本製鉄は58日、JFEホールディングスは121日、神戸製鋼所は103日です。
ガラス・土石製品
AGCは111日、太平洋セメントは70日、TOTOは82日です。
石油・石炭製品
ENEOSホールディングスは38日、出光興産は63日、コスモエネルギーホールディングスは39日です。
ゴム製品
ブリヂストンは95日、住友ゴム工業は101日、横浜ゴムは140日です。
電気機器
日立製作所は122日、パナソニックは49日、三菱電機は-55日です。
機械
三菱重工業は59日、ダイキン工業は139日、小松製作所は258日です。
精密機器
オリンパスは199日、テルモは194日、ニコンは275日です。
医薬品
武田薬品工業は240日、大塚ホールディングスは105日、アステラス製薬は159日です。
空運業
ANAホールディングスは-71日、日本航空は-84日、パスコは192日です。
電気・ガス業
電気・ガス業はCCCが不明のため、省略します。
まとめ
- CCCとは商品を仕入れてから売上が現金化されるまでの日数のこと
- CCC=棚卸資産回転期間+売上債権回転期間ー仕入債務回転期間
- 一般的にCCCは短いほうが経営効率がいいと言われており、標準は40~70日
最後までお読みいただきありがとうございました!
参考URL:
東洋経済オンライン:アップルが「最強の資金繰り」を維持できる理由
ダイヤモンドオンライン:アップルとアマゾンが仕入先に「強気に」出る理由