業種別指標

「仕入債務回転期間」業界目安の完全版~借りを返すまで何日かけてる?

こんにちは!レイです!

24回目の「業界目安の完全版」は仕入債務回転期間です。

29業種の大手企業をグラフで比較しているので、業種や企業によってどのくらいの差があるのか一目で分かります。

仕入債務回転期間とは

仕入債務とは、商品を仕入れた取引先へ支払う義務がある負債です。企業はサービスの取引ごとではなく月末・年度末に一括で代金の請求・振り込みを行うことが多いです。

商品を受け取ってから代金を支払うまでの期間は、払っていない金額分が負債として計上されます。

レイ
レイ
クレジットカードと同じイメージです。
カードを使ったとき、実際にはまだお金を払っていないので、次回の引き落としまで負債として計上されます。

仕入債務回転期間とは商品を仕入れてから買掛金や支払手形が決済されるまでの期間です。

仕入債務を売上原価で割って求めます。

仕入債務回転期間(日)= 仕入債務 / (売上原価 / 365)

仕入債務回転期間が長いと、資金繰りが悪化するだけでなく与信審査でも不利になります。

仕入債務回転期間の目安と比較

仕入債務回転期間は、30日だと早い、60日だと普通、90日だと遅いと言われています。

また、法人向け事業より一般消費者向け事業の方が仕入債務回転期間が短くなりやすいです。

アマゾンの仕入債務回転期間

仕入債務回転期間が長くかつ売上の現金化(売上債権回転率)が短いと、手元に現金が増えて研究開発費や設備投資に使うことができます。

積極的な投資で有名なアマゾンは仕入債務回転期間が90日以上ととても長いです。

アマゾンの債務回転期間は2種類あり、1つは通常の小売業と同じように商品を仕入れて代金を支払う場合の債務です。
もう1つはアマゾン以外の業者がアマゾンのプラットフォームで商品を売り、購入者から入金されたお金を業者に支払う債務です。

アマゾンは後者で購入者の入金から業者への支払いまでを長くすることで、仕入債務回転期間を長期化させていると考えられています。

一般的には仕入債務回転期間が長いと負債を踏み倒すリスクを問題視されますが、世界を代表する大企業になると、倒産の可能性を気にする人はほとんどいません。

業者もアマゾンを利用すると商品が売れるので、入金が遅くても我慢してアマゾンを使います。

以下では証券取引所の金融を除く29業種について、売上高1~3位の企業の仕入債務回転期間をグラフにしています。
※2020年10月~2021年9月に開示された有価証券報告書を参照

業界はザイマニで上場企業の仕入債務回転期間2020年中央値が大きい順番で並べています。
計算はバフェットコードEXCEL財務分析ツールを使っています。

医薬品

武田薬品工業は126日、大塚ホールディングスは137日、アステラス製薬は185日です。

建設業

大和ハウス工業は33日、積水ハウスは38日、大林組は110日です。

化学

三菱ケミカルホールディングスは60日、富士フイルムホールディングスは60日、住友化学は126日です。

パルプ・紙

王子ホールディングスは70日、日本製紙は57日、レンゴーは75日です。

金属製品

LIXILは120日、東洋製罐グループホールディングスは48日、日本発條は57日です。

繊維製品

東レは69日、帝人は58日、東洋紡は60日です。

卸売業(商社)

三菱商事は86日、伊藤忠商事は69日、三井物産は67日です。

卸売業(商社以外)

メディパルホールディングスは110日、アルフレッサホールディングスは113日、三菱食品は60日です。

電気機器

日立製作所は85日、パナソニックは81日、三菱電機は66日です。

アップルは仕入債務回転日数が91日で驚異的と言われていますが、日本の電気機器メーカーもさほど変わりないようです。

電気機器メーカーが電子部品メーカーに有利な条件で取引できる力関係にある証拠です。

ガラス・土石製品

AGCは53日、太平洋セメントは40日、TOTOは69日です。

精密機器

オリンパスは94日、テルモは106日、ニコンは75日です。

機械

三菱重工業は89日、ダイキン工業は51日、小松製作所は59日です。

石油・石炭製品

ENEOSホールディングスは88日、出光興産は48日、コスモエネルギーホールディングスは49日です。

鉄鋼

日本製鉄は118日、JFEホールディングスは62日、神戸製鋼所は94日です。

輸送用機器

トヨタ自動車は70日、本田技研工業は38日、日産自動車は80日です。

その他製品

任天堂は53日、凸版印刷は44日、大日本印刷は78日です。

ゴム製品

ブリヂストンは80日、住友ゴム工業は81日、横浜ゴムは63日です。

食料品

日本たばこ産業は177日、アサヒグループホールディングスは136日、キリンホールディングスは77日です。

小売業

イオンは60日、セブン&アイ・ホールディングスは16日、ファーストリテイリングは74日です。

セブン&アイ・ホールディングスの貸借対照表の負債には、「支払手形及び買掛金」とは別に「加盟店買掛金」という項目があります。

フランチャイズ加盟店では、毎日の売上をATMで本部に送金します。
そして月に1回売上からロイヤリティー(本部の取り分)などを引いた金額が加盟店に入金されます。
まだ加盟店に支払われていない日々の利益が、加盟店買掛金として計上されていると思われます。

ちなみに、コンビニのロイヤリティーは売上総利益の40~70%もあります。
加盟店経営者は売上からロイヤリティーを引いた残りから商品原価・人件費・光熱費などを引かれた分が儲けです。
什器などが供給されるとはいえ生活費をまかなうのも苦しいオーナーも多くいます。

非鉄金属

住友電気工業は61日、三菱マテリアルは43日、古河電気工業は62日です。

陸運業

日本通運は35日、東日本旅客鉄道は11日、東海旅客鉄道は30日です。

空運業

ANAホールディングスは59日、日本航空は95日、パスコは40日です。

水産・農林業

マルハニチロは17日、日本水産は29日、極洋は15日です。

倉庫・運輸関連

近鉄エクスプレスは48日、上組は42日、三井倉庫ホールディングスは31日です。

海運業

日本郵船は45日、商船三井は29日、川崎汽船は32日です。

情報・通信業

ソフトバンクグループは261日、KDDIは94日です。

鉱業

INPEXは13日、石油資源開発は39日、日鉄鉱業は70日です。

サービス業

リクルートホールディングスは79日、博報堂DYホールディングスは104日です。

不動産業

三井不動産は22日、飯田グループホールディングスは33日、三菱地所は25日です。

電気・ガス業

決算項目に売上原価がないため省略します。

まとめ

  • 仕入債務回転期間とは商品を仕入れてから買掛金や支払手形が決済されるまでの期間
  • 仕入債権回転期間とは売上に対する債権の割合で、債権が何日分の売上かが分かる
  • 仕入債務回転期間は長いほうがよく、短いと資金繰り悪化や与信審査で不利になる

最後までお読みいただきありがとうございました!

参考URL:
東洋経済オンライン:アップルが「最強の資金繰り」を維持できる理由
ダイヤモンドオンライン:アップルとアマゾンが仕入先に「強気に」出る理由
オープンアカウント制とは何か?

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA