業種別指標

「純利益率」業界目安の完全版~その企業、手取りいくらもらってる?

こんにちは!レイです!

「業界目安の完全版」シリーズ第七弾は収益性(企業が稼ぐ力)分析の1つ、純利益率です。

29業種の大手企業をグラフで比較しているので、業種や企業によってどのくらいの差があるのか一目で分かります。

純利益率とは

純利益率は収益性分析の代表的な指標で、純利益が売上の何%を占めているかを表します。

純利益とは経常利益に臨時で発生した損益である「特別利益」「特別損失」を足し引きし、税金を引いて最終的に手元に残った利益です。

以下に特別利益・特別損失の例を記載します

特別利益

  • 不動産の売却益
  • 株式・証券の売却益(長期保有のみ)

特別損失

  • 不動産の売却損
  • 株式・証券の売却損
  • 火災・自然災害・盗難
  • 休業による損失、リストラ費用
  • 減損損失
  • 情報漏えい対応
  • 損害賠償対応

コロナウイルスの損害を特別損失に入れている企業もあり、同じ費用でも特別損失になる場合とならない場合があります。

純利益は「税引後利益」「最終利益」「当期純利益」とも呼ばれます。

純利益率は純利益売上で割って求めます。

  • 純利益率 = 純利益/売上高×100
  • 純利益 = 経常利益 + 特別利益 ー 特別損失 ー 税金(法人税など)
  • 特別利益・特別損失:臨時で発生した収益や費用

純利益は配当金や企業の貯金(内部留保)に使われるので、すでに株を持っている株主が一番注目する指標です。

一方で株価は、企業の収益力をあらわす経常利益に影響されやすいです。

純利益率の目安

2020年に公開された有価証券報告書から経常利益率の中央値をランキングにしました。
※金融業は決算項目が特殊であるため除外 

業種中央値の純利益率ランキングのトップは情報・通信業の5.3%です。

情報・通信業の純利益率は2019年が5.1%で5位、2018年は5.2%で7位です。

コロナ化でほとんどの企業が苦戦した中、情報・通信はリモートワークの需要などで追い風になったと想定されます。

業界別純利益率の比較

先ほどのランキングに掲載した全29業界の中央値・業界売上高1~3位の企業を上から順にグラフにしました。※2020年10月~2021年9月に開示された有価証券報告書を参照

計算はバフェットコードEXCEL財務分析ツールを使っています。

業界は純利益率ランキングの高い順で紹介していきます。

純利益率がマイナスの企業はコロナの影響か確認できるように2019年・2018年の経常利益率も記載しています。

レイ
レイ
太字の説明がない業界は会社名と数値のみ書いてあるので読み飛ばしても大丈夫です

情報・通信業

業界中央値は5.3%、日本電信電話は7.7%、ソフトバンクグループは88.6%、KDDIは12.3%です。

ソフトバンクは経常利益率が100%をこえていることから、純利益も大きくなっています。

ソフトバンクの経常利益率についてはこちらの情報・通信業の章を参照してください。
>>>その企業、稼げてる?~「経常利益率」業界比較の完全版

医薬品

業界中央値は4.7%、武田薬品工業は11.8%、大塚ホールディングスは10.4%、アステラス製薬は9.7%です。

新型コロナウイルスによる受信抑制やインバウンド需要の減少で、打撃を受けた製薬会社もあります。

一方で武田薬品は海外の売上が8割以上を占め、コロナ禍でも海外の売り上げが好調でした。

不動産業

業界中央値は4.7%、三井不動産は6.5%、飯田グループホールディングスは5.7%、三菱地所は11.2%です。

鉱業

業界中央値は4.3%、INPEXは-14.5%、石油資源開発は-1.1%、日鉄鉱業は3.1%です。

INPEXは経常利益率では32.2%と、今回登場している企業で任天堂の次に高い数値でしたが

コロナウイルスによるエネルギー需要の低下により、特別損失を減損損失として計上し

純利益は赤字になっていました。

減損はオーストラリアやアメリカの土地の鉱業権(石油・天然ガスなどを掘って取得する権利)や掘採するための装置において

回収できる見込みの利益が少なくなった分を特別損失に計上しました。

化学

業界中央値は4.3%、三菱ケミカルホールディングスは6.3%、富士フイルムホールディングスは8.3%、住友化学は2%です。

機械

業界中央値は4.1%、三菱重工業は1.1%、ダイキン工業は6.3%、小松製作所は4.9%です。

ガラス・土石製品

業界中央値は4%、AGCは2.3%、太平洋セメントは5.4%、TOTOは4.7%です。

建設業

業界中央値は3.8%、大和ハウス工業は4.7%、積水ハウスは5%、大林組は5.6%です。

空運業

業界中央値は3.8%、ANAホールディングスは-55.5%、日本航空は-59.6%、パスコは5.9%です。

ANAの2019年純利益率は1.4%、2018年純利益率は5.4%でした。

日本航空の2019年純利益率は3.5%、2018年純利益率は10.1%でした。

精密機器

業界中央値は3.4%、オリンパスは1.8%、テルモは12.6%、ニコンは-7.6%です。

サービス業

業界中央値は3.2%、日本郵政は3.6%、リクルートホールディングスは5.8%、博報堂DYホールディングスは2%です。

陸運業

業界中央値は3.2%、東日本旅客鉄道は-32.7%、日本通運は2.7%、東海旅客鉄道は-24.5%です。

東日本旅客鉄道の2019年純利益率は6.7%、2018年純利益率は9.8%でした。

東海旅客鉄道の2019年純利益率は21.6%、2018年純利益率は23.4%でした。

電気機器

業界中央値は3.2%、日立製作所は5.7%、パナソニックは2.5%、三菱電機は4.6%です。

電気・ガス業

業界中央値は3.2%、東京電力ホールディングスは3.1%、関西電力は3.5%、中部電力は5%です。

金属製品

業界中央値は3%、LIXILは2.4%、東洋製罐グループホールディングスは2.1%、日本発條は1.6%です。

パルプ・紙

業界中央値は3%、王子ホールディングスは3.7%、日本製紙は0.3%、レンゴーは4.2%です。

倉庫・運輸関連

業界中央値は3%、近鉄エクスプレスは3.6%、上組は6.7%、三井倉庫ホールディングスは4.6%です。

ゴム製品

業界中央値は2.9%、ブリヂストンは-0.8%、住友ゴム工業は2.9%、横浜ゴムは4.6%です。

ブリヂストンの2019年純利益率は6.8%、2018年純利益率は8.0%でした。

その他製品

業界中央値は2.7%、凸版印刷は5.6%、大日本印刷は1.9%、任天堂は27.3%です。

任天堂は2012年に純利益率が-6.7%まで下がりましたが、2017年3月にSwitchが発売されて以降

業績が急激に上昇し2019年から2020年は純利益率が7.5%高くなりました。

鉄鋼

業界中央値は2.5%、日本製鉄は-0.7%、JFEホールディングスは-0.7%、神戸製鋼所は1.4%です。

日本製鉄の2019年純利益率は-7.3%、2018年純利益率は4.1%でした。

JFEの2019年純利益率は-5.3%、2018年純利益率は4.2%でした。

食料品

業界中央値は2.4%、日本たばこ産業は14.8%、アサヒグループホールディングスは4.6%、キリンホールディングスは3.9%です。

非鉄金属

業界中央値は1.9%、住友電気工業は1.9%、三菱マテリアルは1.6%、古河電気工業は1.2%です。

海運業

業界中央値は1.9%、日本郵船は8.7%、商船三井は9.1%、川崎汽船は17.4%です。

2020年は日本郵船・商船三井・川崎汽船のが定期コンテナ船事業を統合して設立したOcean Network Express社の業績が好調し

3社に利益が配分されて純利益が押し上げられました。

Ocean Network Expressの株主は川崎汽船が31%、商船三井が31%、日本郵船が38%です。

川崎汽船はOcean Network Express社で受けた恩恵が売上に占める割合が他の2社より大きく

純利益は3社の中でとびぬけて高くなりました。

輸送用機器

業界中央値は1.7%、トヨタ自動車は8.3%、本田技研工業は5%、日産自動車は-5.7%です。

日産の2019年純利益率は-6.8%、2018年純利益率は2.8%でした。

水産・農林業

業界中央値は1.6%、マルハニチロは0.7%、日本水産は2.2%、極洋は1.5%です。

卸売業(商社)

業界中央値は1.5%、三菱商事は1.3%、伊藤忠商事は3.9%、三井物産は4.2%です。

卸売業(商社以外)

業界中央値は1.5%、メディパルホールディングスは0.7%、アルフレッサホールディングスは0.9%、三菱食品は0.4%です。

繊維製品

業界中央値は1.4%、東レは2.4%、帝人は-0.8%、東洋紡は1.2%です。

帝人の2019年純利益率は3.0%、2018年純利益率は5.1%でした。

小売業

業界中央値は1.1%、イオンは-0.8%、セブン&アイ・ホールディングスは3.1%、ファーストリテイリングは4.5%です。

イオンの2019年純利益率は0.3%、2018年純利益率は0.3%でした。

経常利益率は1.6%でしたが、休業中の賃料減免、休業中の固定費・感染対策費用を特別損失に計上しており純利益がマイナスになりました。

石油・石炭製品

業界中央値は-0.2%、ENEOSホールディングスは1.5%、出光興産は0.8%、コスモエネルギーホールディングスは3.8%です。

まとめ

  • 純利益とは税金などを引いて最終的に残るお金
  • 純利益は配当金や内部留保に使われる
  • コロナの影響でかかった費用を経常利益から差し引く特別損失として計上している場合がある

最後までお読みいただきありがとうございました!

参考URL:
純利益とは?営業利益・経営利益などの種類と違いを理解する
【2021年版】国内製薬会社ランキング 武田、今年も3兆円超えでトップ…コロナ禍でも海外は好調
武田薬品・中外製薬・第一三共…製薬4社がそろって減収に陥った各社の事情

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA