業種別指標

「D/Eレシオ」業界目安の完全版~お金を貸しても大丈夫?

こんにちは!レイです!

22回目の「業界目安の完全版」はD/Eレシオ(ディーイーレシオ, 有利子負債比率)です。

29業種の大手企業をグラフで比較しているので、業種や企業によってどのくらいの差があるのか一目で分かります。

D/Eレシオとは

D/EレシオとはDebt Equity Ratioの略で、自己資本に対する有利子負債の割合です。

企業の負債額が適切か分かり、金融機関が融資を判断したり、社債の格付けに利用されます。

有利子負債とは、借入金は社債など、利子をつけて返済する負債です。

D/Eレシオ=有利子負債 / 自己資本(株主資本)

自己資本は株主資本に「その他包括的利益累計額」を加えたものです。本記事では自己資本を使って計算します。

D/Eレシオに似た指標として、企業の支払い能力をより厳密に計算した「ネットD/Eレシオ(有利子負債ー現預金)+株主資本」もあります。

自己資本比率も安定性をはかる指標ですが、自己資本比率は買掛金や未払金など利子がつかない負債を考慮しているのに対し、D/Eレシオは有利子負債に焦点を当てているのが特徴です。

D/Eレシオの目安と比較

D/Eレシオは低いほど安全性が高いです。一般的に100%を下回ると健全と言われています。

不動産など高額な資産が必要な業種はD/Eレシオが高くなり、IT企業は少ない資本で事業を運営できるためD/Eレシオが低くなる傾向があります。

以下では証券取引所の金融を除く29業種について、売上高1~3位の企業のD/Eレシオをグラフにしています。
※2020年10月~2021年9月に開示された有価証券報告書を参照

業界はザイマニで上場企業のD/Eレシオ2020年中央値が小さい順番で並べています。
計算はバフェットコードEXCEL財務分析ツールを使っています。

建設業

大和ハウス工業は74.8%、積水ハウスは41.9%、大林組は21.2%です。

金属製品

LIXILは107.8%、東洋製罐グループホールディングスは20.2%、日本発條は24.6%です。

情報・通信業

日本電信電話は9.9%、ソフトバンクグループは191.4%、KDDIは34.6%です。

医薬品

武田薬品工業は89.6%、大塚ホールディングスは12.2%、アステラス製薬は0%です。

アステラス製薬は借り入れを行わない、無借金経営です。

製薬業は膨大な研究開発のうち、何万分の一の確率で収益の柱となる製品を作るハイリスク・ハイリターンの事業のため、財政は常に余裕を持つ必要があります。

医薬品は無借金経営の企業が多い業種です。

鉱業

INPEXは45.1%、石油資源開発は28.1%、日鉄鉱業は20.8%です。

機械

三菱重工業は83.9%、ダイキン工業は45.1%、小松製作所は50.5%です。

化学

三菱ケミカルホールディングスは190%、富士フイルムホールディングスは26.6%、住友化学は132.6%です。

三菱ケミカルホールディングスのD/Eレシオは2018年以降急激に増えています。
近年の厳しい市場環境をふまえて、2021年4月に初めて外国人社長を迎えました。

新社長についたベルギー出身のギルソン氏は財務の安定を最初の優先事項にすえています。
一部事業を売却する可能性も示唆し、変革に意気込みを見せています。

電気機器

日立製作所は60.2%、パナソニックは43.9%、三菱電機は60.2%です。

ガラス・土石製品

AGCは62.8%、太平洋セメントは55.7%、TOTOは26.7%です。

その他製品

任天堂は0%、凸版印刷は24.5%、大日本印刷は15.7%です。

任天堂は無借金経営で有名です。無借金経営だと、急な不況でも倒産の確率が低くなります。
President Onlineが発表した「コロナに強い企業600社」では任天堂は2位に入っています。

「コロナに強い企業600社」は有利子負債・自己資本比率・ネットキャッシュ(現金・預金+有価証券ー有利子負債)を考慮しており、任天堂は自己資本比率が80%をこえている上にお金をたくさん持っていることが評価されました。

卸売業(商社)

三菱商事は128%、伊藤忠商事は127.2%、三井物産は87.4%です。

卸売業(商社以外)

メディパルホールディングスは5.8%、アルフレッサホールディングスは1.3%、三菱食品は3.3%です。

卸売業は実質無借金経営を実現しています。

これは在庫回転率を高めて、仕入の支払いを商品が現金化された後に行っているからです。(CCCがマイナス)
薄利多売で利益率が低い業界のイメージですが、資金繰りのよさで財政が安定しています。

手元の資金が十分にある一方で借り入れを行っているのは、有事に備えて金融機関との付き合いを持っておくためです。

食料品

日本たばこ産業は38%、アサヒグループホールディングスは120.3%、キリンホールディングスは76.6%です。

サービス業

日本郵政は2.2%、リクルートホールディングスは38.3%、博報堂DYホールディングスは35.2%です。

繊維製品

東レは78.7%、帝人は93.2%、東洋紡は98.5%です。

精密機器

オリンパスは90.1%、テルモは30.4%、ニコンは24.9%です。

パルプ・紙

王子ホールディングスは86.2%、日本製紙は196.1%、レンゴーは102.4%です。

鉄鋼

日本製鉄は89.4%、JFEホールディングスは98.0%、神戸製鋼所は147.5%です。

輸送用機器

トヨタ自動車は109.6%、本田技研工業は85%、日産自動車は192.6%です。

ゴム製品

ブリヂストンは46.8%、住友ゴム工業は47.8%、横浜ゴムは50%です。

非鉄金属

住友電気工業は41.2%、三菱マテリアルは115.5%、古河電気工業は111.8%です。

小売業

イオンは322.1%、セブン&アイ・ホールディングスは66%、ファーストリテイリングは48.7%です。

倉庫・運輸関連

近鉄エクスプレスは113.9%、上組は0%、三井倉庫ホールディングスは172.1%です。

空運業

ANAホールディングスは164.4%、日本航空は54.4%、パスコは157.5%です。

陸運業

日本通運は63.8%、東日本旅客鉄道は142.5%、東海旅客鉄道は39.3%です。

石油・石炭製品

ENEOSホールディングスは109.1%、出光興産は111.2%、コスモエネルギーホールディングスは187.5%です。

水産・農林業

マルハニチロは181.9%、日本水産は108.6%、極洋は126.7%です。

不動産業

三井不動産は120.5%、飯田グループホールディングスは49.2%、三菱地所は136.3%です。

電気・ガス業

東京電力ホールディングスは143.9%、関西電力は231%、中部電力は107.9%です。

海運業

日本郵船は152.1%、商船三井は177.4%、川崎汽船は232.4%です。

まとめ

  • D/Eレシオとは、自己資本に対する有利子負債の割合
  • D/Eレシオは金融機関が融資を判断したり、社債の格付けに利用される
  • 大きな資産が必要な業種はD/Eレシオが高くなり、資産の必要性が低い業種はD/Eレシオが低くなる傾向がある

最後までお読みいただきありがとうございました!

参考URL:
三菱ケミHD、「外国人社長」起用に浮かぶ危機感

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