29回目の「業界目安の完全版」は一人当たり営業利益です。
29業種の大手企業をグラフで比較しているので、業種や企業によってどのくらいの差があるのか一目で分かります。
一人当たり営業利益とは
一人当たり売上高とは、従業員一人がいくら営業利益を生み出しているかを表す効率性分析の指標です。
一人当たり営業利益=営業利益 / 従業員数(人)
従業員数には一般的にパート・アルバイト・派遣社員は含まれないため、実際の一人当たり売上とはずれが発生します。
一人当たり営業利益は地域・業種によって差があり、フランチャイズ経営だと店員が従業員数にカウントされないため一人当たり営業利益が高くなります。
一人当たり営業利益の目安と比較
一人当たり営業利益が多いほど生産性が高く、営業利益を上げるか従業員数を減らすことで改善されます。
また、管理部門の人数を減らして営業部門の人手を増やすと、従業員数が変わらなくても一人当たり営業利益が高くなる場合があります。
資本集約型の事業は一人当たり営業利益が高く、飲食店などの労働集約型は低くなる傾向です。
東洋経済の「1人当たり営業利益」トップ500社ランキングによると、2017年時点で1人当たり営業利益が1000万円を超える上場企業は238社ありました。
日本経済新聞が2019年上期で調査した非製造業の一人当たり営業利益伸び率ランキングでは、吉野家ホールディングスが66万8000円で前年同期の50.7倍でトップでした。
客が配膳・片づけを行うセルフサービスの店舗を増やし、セルフ型では店員の平均歩数が2~3割減りました。新メニュー「超特盛」(税抜き722円)のヒットも要因です。
他には在庫管理を徹底して値引きセールを減らす・利益率の高い事業の比率を上げる・物流拠点の自動化で一人当たり営業利益を上げている企業がありました。
以下では証券取引所の金融を除く29業種について、売上高1~3位の企業の一人当たり営業利益をグラフにしています。
※2020年10月~2021年9月に開示された有価証券報告書を参照
業界はザイマニで上場企業の一人当たり売上高2020年中央値が大きい順番で並べています。
計算はバフェットコードとEXCEL財務分析ツールを使っています。
不動産業
三井不動産は8.5百万円、飯田グループホールディングスは12百万円、三菱地所は22.5百万円です。
2017年に発表された東洋経済 「1人当たり営業利益」トップ500社ランキングでは、「1人当たり売上高」ランキングと同じくテナントビル・マンションの仕入れ販売を手掛ける不動産企業の「アルデプロ」が2億円超で1位になりました。
アルデプロの社員は19人で、一人当たり売上高は14.5億円です。
医薬品
武田薬品工業は10.8百万円、大塚ホールディングスは6百万円、アステラス製薬は8.8百万円です。
鉱業
INPEXは78.6百万円、石油資源開発は2.4百万円、日鉄鉱業は4.5百万円です。
INPEXは、本記事の登場企業の中で一人当たり営業利益・営業利益率がともに2位です。石油などのエネルギー開発・供給は多くの設備を有する資本集約型のビジネスであることが分かります。
一人当たり営業利益・営業利益率の1位はどちらも任天堂になりました。
電気・ガス業
東京電力ホールディングスは3.8百万円、関西電力は4.6百万円、中部電力は5.2百万円です。
建設業
大和ハウス工業は7.3百万円、積水ハウスは6.6百万円、大林組は8.1百万円です。
海運業
日本郵船は2百万円、商船三井は-0.6百万円、川崎汽船は-3.5百万円です。
ガラス・土石製品
AGCは1.3百万円、太平洋セメントは5.1百万円、TOTOは1.2百万円です。
化学
三菱ケミカルホールディングスは0.7百万円、富士フイルムホールディングスは2.3百万円、住友化学は3.9百万円です。
食料品
日本たばこ産業は8百万円、アサヒグループホールディングスは4.5百万円、キリンホールディングスは3.3百万円です。
卸売業(商社以外)
メディパルホールディングスは3百万円、アルフレッサホールディングスは1.7百万円、三菱食品は3.1百万円です。
鉄鋼
日本製鉄は0.1百万円、JFEホールディングスは0.1百万円、神戸製鋼所は0.8百万円です。
鉄鋼業界の市場は低迷しており、日本製鉄・JFEホールディングスは純利益がマイナスであるため、一人当たり営業利益も低くなっています。
鉄鋼は大きな設備が必要で、固定費・減価償却費が多いため不況時の一人当たり営業利益は小さくなると考えられます。
情報・通信業
日本電信電話は5.1百万円、KDDIは21.9百万円です。
石油・石炭製品
ENEOSホールディングスは6.2百万円、出光興産は10百万円、コスモエネルギーホールディングスは14.3百万円です。
機械
ダイキン工業は2.8百万円、小松製作所は2.7百万円です。
パルプ・紙
王子ホールディングスは2.4百万円、日本製紙は1.2百万円、レンゴーは2.1百万円です。
小売業
イオンは1百万円、セブン&アイ・ホールディングスは6.2百万円、ファーストリテイリングは2.6百万円です。
ユニクロの後継と言われているワークマンは、フランチャイズ店舗の従業員数がカウントされないため、一人当たり営業利益が高くなります。また、直営店でも接客はアパレルの専門業者に委託し、常駐している正社員はいません。
徹底した効率化と独自の発注ロジックなどにより、一人当たり営業利益は72百万円になっています。
>>>ポスト・ユニクロは作業服メーカーで決まり!?~ワークマンの経営戦略
金属製品
LIXILは0.7百万円、東洋製罐グループホールディングスは1.4百万円、日本発條は0.6百万円です。
倉庫・運輸関連
近鉄エクスプレスは2.1百万円、上組は5.6百万円、三井倉庫ホールディングスは2.1百万円です。
非鉄金属
住友電気工業は0.4百万円、三菱マテリアルは1百万円、古河電気工業は0.2百万円です。
水産・農林業
マルハニチロは1.2百万円、日本水産は1.9百万円、極洋は2百万円です。
サービス業
リクルートホールディングスは3.5百万円、博報堂DYホールディングスは1.8百万円です。
精密機器
オリンパスは2.6百万円、テルモは3.7百万円、ニコンは-2.9百万円です。
電気機器
パナソニックは1.1百万円、三菱電機は1.6百万円です。
その他製品
任天堂は97.4百万円、凸版印刷は1.1百万円、大日本印刷は1.3百万円です。
任天堂は本記事の登場企業で一人当たり営業利益がトップです。任天堂は売上高営業利益率でもトップの36.4%でした。
任天堂は2019年にサブスクリプションサービス「Nintendo Switch Online」を開始し、インターネット上で大量に商品がコピーできるようになり、レバレッジがきくようになりました。
空運業
ANAホールディングスは-10百万円、日本航空は-10.8百万円、パスコは1.7百万円です。
陸運業
日本通運は1.1百万円、東日本旅客鉄道は-7.2百万円、東海旅客鉄道は-6.1百万円です。
繊維製品
東レは1.2百万円、帝人は2.6百万円、東洋紡は2.6百万円です。
ゴム製品
ブリヂストンは0.5百万円、住友ゴム工業は1百万円、横浜ゴムは1.3百万円です。
輸送用機器
トヨタ自動車は6百万円、本田技研工業は3.1百万円、日産自動車は-1.1百万円です。
まとめ
- 一人当たり営業利益=営業利益 / 従業員数(人)
- 一人当たり営業利益が多いほど生産性が高く、営業利益を上げるか従業員数を減らすことで改善される
- 資本集約型の事業は一人当たり営業利益が高く、労働集約型は一人当たり営業利益が低くなる
最後までお読みいただきありがとうございました!
参考URL:
東洋経済 「1人当たり営業利益」トップ500社ランキング
1人当たり営業利益、吉野家HDが伸び率トップ
一人当たり営業利益5000万円、ワークマンを稼がせる独自システム