マクドナルドが2017年にオリンピックのスポンサー契約を打ち切り、巨額の協賛金が負担になっていたのではないかと話題になりました。
スポンサー料はランクがあり金額の大小はありますが、スポンサー料を払う”男気”のある企業はどこなのか気になったので、企業規模に対するスポンサー料のランキングを作ってみました!
※調査結果が見たい方は、男気スポンサーランキングまでとばしてください。
オリンピックのビジネス
オリンピックの主なお金の流れを説明します。
かつてオリンピックは大幅な費用を開催都市に負担させる赤字のイベントであり、1984年の開催にはどこの都市も立候補しない異例の事態になりました。
IOCに依頼されたロサンゼルスが費用を負担しない条件でしぶしぶオリンピックを受け入れ、サマランチIOC会長(国際オリンピック委員会)による改革が始まりました。
- 米国4大ネットワークのうち、最も高い金額を示した企業に放映権を渡すと競争心をあおり、ABCと約450億円で契約
- 多数のスポンサーによる五輪のロゴマーク乱用をやめ、スポンサーは1業種1社、合計30社のみに限定。ロゴマークの相場を高め、高額の協賛金を集めることに成功
- キャラクターグッズの販売、有料聖火ランナーを1キロ3000ドルで発売
オリンピックは約400億の黒字に終わり、1992年には6都市がオリンピックに立候補しました。
オリンピックを開催するためには、招致費用、国立競技場などの直接オリンピックに関係のある費用(直接費)、空港・道路・宿泊施設等の間接的な経費(間接費)があります。
間接費は直接費の数倍に上り、これらの費用はテレビ放映権料、企業協賛金、公費等によってまかなわれます。
オリンピックスポンサーの種類と金額
五輪のスポンサー企業には、映像の使用権や、大会会場でのプロモーション活動などが認められています。
スポンサーには4つのランクがあります。
- ワールドワイドオリンピックパートナー(年間25億、10年契約)
- ゴールドパートナー(年間25億)
- オフィシャルパートナー(年間20億)
- オフィシャルサポーター(年間10億)
ワールドワイドパートナーはオリンピック自体のスポンサーとして世界中でマーケティング活動が承認されており、それ以外は国内のみでマーケティングできるスポンサーです。
東京大会では、ワールドワイドパートナーとゴールドパートナーの権利は同様です。
オフィシャルパートナーやオフィシャルサポーターは選手団記者会見におけるパートナーロゴ露出ができないなど、使用できる権利が小さくなります。
1984年のサマランチIOC会長(国際オリンピック委員会)による改革のあと、オリンピックスポンサーは1業種1社の原則がありましたが、1社の負担の大きさやスポンサー数が限られてしまうことから、東京大会から1業種1社の制限が撤廃されました。
オリンピックのスポンサーになる目的は各企業によって異なり、一般的にイメージしやすいのは広告戦略、CSR活動(社会貢献)があります。
中には、VISAのようにチケットの電子決済を独占することで数十億ドル以上を売り上げ、新興国での新規顧客を獲得するといった、事業特有の目的もあります。
男気の測定方法
結果が見たい方は「男気スポンサーランキング」までとばしてください。
男気の定義
ここでいう『男気』とは、じゃんけんで負けた人が全員分のアイスをおごる「男気じゃんけん」に代表されるように、
お金に関して気前がいい・器が広いことを指します。
男気の測定方法
男気をどのように数値化するかですが、まず思いついたのは「販管費に占めるスポンサー料の割合」です。
しかし売上高が大きく営業利益に余裕があれば本人の痛みはそれほどないのでは?と思い、却下しました。
続いて「売上高に占めるスポンサー料の割合」で考えましたが、
販管費が極端に少ない場合は営業利益に余裕が出ている可能性があり、本人の痛みが少ないのでは?とこちらも却下しました。
最後に、売上総利益から販管費が差し引かれた後の「営業利益にスポンサー料が占める割合」が多かったら、
当事者は経営的に痛いのではないか?と仮定し、こちらを採用することにしました。
※スポンサー料が経常利益に占める割合でも比べられますが、今回は分かりやすいように営業利益を使用します。
オリンピックスポンサーの契約金額ははっきりしませんが、同じスポンサー料であれば
「営業利益額に占めるスポンサー料の比率ランキング」=「営業利益額のランキング」
となるため、スポンサーのランクごとに営業利益額の順に日本企業のスポンサーを並べてランキングにしています。
(但し、同じランクの中でスポンサー料に価格の幅があるのかは分かっていません。)
ランキングに使用したデータ
スポンサー契約が決まっている頃の契約期限は契約締結日~2020年末日であり、新聞社4社が2016年1月に締結しています。
そのため、契約締結の判断材料になったと思われる2015/1/1~2015/12/31日に公開された有価証券報告書の営業利益額(連結決算)を使用しました。
※オリンピックの延期に伴い原則2021年末日までスポンサー契約期間が延長され、各企業は追加費用を支払いました。
参考として推定のスポンサー料が営業利益に占める割合も出したため、
スポンサー料の額が小さくても「男気」を見せた企業があるか確認してもらおうと思います。
男気スポンサーランキング
下記公式サイトスポンサーのうち、外資系・業績を開示していない非上場企業・営業利益項目がない企業以外について調査。
ttps://olympics.com/tokyo-2020/ja/organising-committee/marketing/sponsors/
![男気スポンサーランキング](https://kaikeiei-gaku.com/wp-content/uploads/2021/10/03_table-4.png)
ランクごとではパナソニック、エネオス、近畿日本ツーリスト、丸大食品が営業利益に占めるスポンサー料の比率が多く、男気を見せてくれました。
近畿ツーリスト、JTBといった旅行会社のスポンサー料が高くなっていますが
オリンピックツアーといった名前で高単価客の取り込みを期待できるゆえの戦略的投資と考えられます。
エネオスは営業利益が2189億円の赤字ながらも
オリンピック史上初めて聖火台の燃料として水素を供給するなどクリーンなエネルギーで貢献してくれました。
ただし企業規模は大きく、前年の2014年度は2137億円の利益を出しており
一転して黒字になると約20億円の費用はすぐに回収できるでしょう。
赤字企業を除くと、最もスポンサー料の割合が高かったのは意外にもアース製薬です。
スポンサーとして前例のない「虫ケア用品、家庭用肥料、培養土及び除草剤」カテゴリーとして
殺虫剤ではなく虫との共存を目指す”虫ケア用品”の浸透をはかるべく、契約しました。
まとめ
今回の調査を通して、以下のことが分かりました。
- 赤字企業を除いてもっとも男気があったオリンピックスポンサーはアース製薬
- アース製薬は殺虫剤ではなく”虫ケア用品”の浸透をはかる戦略で契約
- 他には近畿ツーリスト、JTBといった旅行会社はオリンピックツアーで高単価客の取り込みを行うための戦略的投資と考えられる
今回頑張ってIR資料からデータを収集してみましたが
予想もしない企業がスポンサーになっていた、スポンサーと企業戦略の関係が分かった等
面白い発見がいろいろできたと思います。
またこのような分析に挑戦してみたいと思います。